春の泥、にじんで
たりぽん(大理 奔)


影を踏むように
引き留めても
すり抜けて
肌に服にはりつき
ぬぐいきれない汚れのように
透明でいとおしい
たんぽぽが
そこにあった、ということ

   ロゼッタの刻印を
   あぜ道に残して
   いってしまう季節の
   きてしまう季節の

去年と今年はあまりちがわなくて
百年前と今はまったくかわってしまって
ちょっとずつちがう明日ではなく
色あせてしまうほど昔の思い出でもなく
かわらなくて、
あなたはかわらなくて
かわらなく、なってしまって

ひきとめることのできない
まるで影をつかむように
いつもそばにあるのに
だれのものでもなくて

透明でいとおしい
命をつないだという証と
たんぽぽが
そこにあった、という

刻印がいつまでも
あなたの名前のまま
そこに




自由詩 春の泥、にじんで Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-03-18 23:53:46
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たんぽぽ