近所の汚れた川に肩まで浸かって待ち伏せた鴨を殺して食べたいよ
黒川排除 (oldsoup)

ある日憎しみが空から降ってきた 皆は窒息した

虫かごを下げて草むらを這いずり回っていた頃があったろう
誰もが共有する思い出だ すべての思い出なら無意味だ
わたしはりんりんと鳴く虫を肩から下げて夕方を待っていた

移ろう日々は だがその度わたしを打ちのめした 粉々にだ
やがて虫が死んでしまって一生が何か悲しい広がりに思えるだろう

あの空に何が見えるか説明できなかった 今でもおそらくはそうだ
虫かごはプラスチックの四畳半 子供の粉ミルク代を奪いながら
あぁと叫び声を上げて放火した家屋の壁に二十四色の絵の具を撒き散らし
蝶の羽に飛ぶための器官以外の意味を加えようとした空は青かった

わたしの所有した土はわたしの名のもとに わたしを名付けたものに
安易だ と呟くわたしの造形が虫以上に安易であることを望むように


自由詩 近所の汚れた川に肩まで浸かって待ち伏せた鴨を殺して食べたいよ Copyright 黒川排除 (oldsoup) 2004-04-23 02:48:43
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