お伽、隠滅
A道化



午睡が
目蓋をあとにして 引いた頃
残された畳は
幾重もの夕刻で磨耗して
いつしか
青みを失っていた


かつて 
お伽噺の 
わざとらしい色合いの湿度を
痒がって むずかって
綺麗な紙箱に閉じ込めた
筈 なのに


ああ、
脱衣所の外、にて
千代紙を脱ぎ捨てた肌に、あれ程に、これ程に、お伽が息づいて、いて、 
お伽が、ああ、息づいているなんてそんなこと、打ち消したくて、
打ち消したくて選んだ畳にて、幼き午後を倣い、幼さを倣い、催した午睡、
が、


引いた 頃
その粗雑さの為 選び 肌を寄せた畳を 
いっそう磨耗させる夕刻なら
そんな夕刻の通過が 幾重にも繰り返すなら
この肌に息づくお伽だって削ぎ取って
焼却してよ 夕焼けで


2004.4.21.


自由詩 お伽、隠滅 Copyright A道化 2004-04-22 20:49:41
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