明けの化石
A道化



浴槽に沈んでいる 午前三時の
代わりに沈み始めた 
無益な水分を含んだ体だ
生暖かく悲しがり
一匹の魚も住めない水分子を
誰か 泣いてくれ


眼球が 震えているのか 
眼球以外が 震えているのか
アルコールの手に落ちた血液の
赤い殴打、殴打、殴打によってしか
赤みを感受できない体を
誰か 泣いてくれ


浴槽で露見しつつある 午前五時と
共に露見し始めた
うな垂れる頚椎だ
カーブの不自然さの為に
野の花の末期に似る皮肉を
誰か 泣いてくれ


このまま 明ける初夏を浴びる頚椎は
熱く熱く熱く 熱いまま
皮膚を突き破りそうに浮かび上がり
熱など 肌色など 打ち消すほどの凹凸の激しさで
魚の化石として隆起してしまうから
ねえ誰か 泣いてくれ



2004.4.21.


自由詩 明けの化石 Copyright A道化 2004-04-22 20:33:20
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