良い詩を読ませてくれないか?
松本 卓也

一重に幾重に
堆積した言葉の渦に
埋もれる心があったとさ

貴方の為だとか言う
使い古されたキーワードには
傲慢さが見え隠れしているのに

恥ずかしげも無く語る
思い至る事も無く告げる
主観さえ放棄したままに

詠う心がそこに無くとも
刻まれた烙印に従うように
ただ記された証にだけ忠実

何を見ているのか問おうか
言葉の先に存在する事も無い
麗句だけを構築した挙句の果て

誰も何も知らない事さえも
誰も見ても居ない事さえも
誰も解ったふりをする事さえも

知りえない事ばかりなのに
まるでそれこそは世界の構成要素であるように
埋葬した空間だけが社会であるかのように

振舞う影は中途半端
まずは間違いの根本が
自らの思想にある事からはじめよ

心地よく映る社会は狭いのだ
傷つけられた世界よりも遥かに
取り残された関係よりも幾分と

生身の軋轢さえ耐える事もできず
指で形作る長方形程度の空間で
儀善意を見せびらかす自慰に没頭し

天使のように振る舞う事も
悪魔のように撒き散らす事も
所詮は逃避に過ぎないのさ

淀みも吐き出さず取り繕われた
理想なんかに傾倒するほどまでの
角砂糖が入った珈琲は飲みたくも無い

嘔吐しろ
腐肉にも似た
隔絶の隙間で放つ魂を

それこそが本当の詩なのだ


自由詩 良い詩を読ませてくれないか? Copyright 松本 卓也 2007-03-14 00:26:01
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