弱者の拳 
服部 剛

昨日は職場のおばさんの 
くどい小言こごとに嫌気がさして 
かけがえのない他の人さえ 
土俵の外へうっちゃり 
しかめっ面でひとり相撲をしていた 

昨晩見た夢のなかで 
旧友のむなぐらを掴んだところで 
目が覚めると  
冷や汗が流れていた 

今朝の満員電車のドアに 
乗客を押し込むアルバイトのおじさんは 
ホームから発車すると 
無条件におじぎをした姿のまま 
車窓から消えた 

ぼくは 
愛を何処かに 
置き忘れたまま 
今日も吊革つりかわにぶらさがる 

( 脳裏には、遠い挫折の日の記憶。 

昔の職場で「失格」の烙印らくいんを押され 
日常業務を外され 
社内の便所ばかりを磨いていた 
「 あの頃のぼく 」 

少し年齢としを重ねた 
ぼくのこころのなかで 
彼は今もうつむいている 

震えるこぶしを、握りしめ。 





自由詩 弱者の拳  Copyright 服部 剛 2007-03-13 19:58:54
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