ひとつ ながれ
木立 悟




青空を白く
音の粒がわたり
とどめようとする目は
まぶしくまばたく
坂を下る陽
みどりを連れて
歩み去る金
指の花粉を
雪へ散らす


海から来た透明が
近づくものを映している
曇をなぞる音が来て
波に落ちては波をなぞる
かたちあるものは持ち去られ
波を上下する光の
ひそかな捕食がある


傷の光は水になり
見えない水車を動かしてゆく
傷は傷のむこうへつづき
水は水へ水を手わたす
水車の音だけがころがりつづけ
みどりをみどりに描きつづける


歯車をひとつ失くした街が
つぶやきを響かせては静まりかえる
光は水になりながら光をすくい
誰にも手わたせずにこぼしてゆく
音は流れを流れつづけ
遠くを曲がり
見えなくなる


高く永くつづくうたがあり
陽と水をつないでゆらめいている
とけるようにけむる流木が
それぞれのかたちのまま曇に加わり
ゆらめくものは水辺をめぐり
午後の応えはたなびいてゆく














自由詩 ひとつ ながれ Copyright 木立 悟 2007-03-11 17:38:24
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