水の男
maynard

俺の手には零れ落ちるものばかり
めげずに何度もすくっているのだけれども
ことごとく零れ落ちるのだ
地球上の水を全てすくってやろうなんて考えちゃいない
俺の手に収まる範囲で慎ましくすくっても
零れ落ちて落下してゆく
何度繰り返しただろう
もうそろそろ諦めてもいいんじゃないか
俺は良くがんばった
もうすくわなくても良いんじゃないか
例えすくえたとしても
慰めや慈悲などあるわけは無いのだから
それは無責任かも知れない

「水は低きに流れ 人の心もまた低きに流れる」

この流れを止める事など不可能なのだ
だから零れ落ちる
重力が重過ぎるのではない
たとえ重力が無くなったとしても
それはすくい上げる事などできやしない

でももう一度水の中に手を突っ込む
この事実を確認するように
恐る恐る


自由詩 水の男 Copyright maynard 2007-03-11 11:57:18
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