ネバダガール
うおくきん

学習ルームであの娘を殺した君のお気に入りのカッターが僕の首筋に当たっているね。
ちょっと切れてキラキラキレイな血の筋ができているね。
いいんだよ。血のにおいは嫌いじゃない。痛いのも嫌いじゃない。


もしも、君と僕がクラスメイトだったら、君の狂気と孤独を受け止めてあげられたかもしれないかもね。
だって、君も狂ってるし、僕も狂ってるから。
君も寂しいし、僕も寂しいから。
狂った君と、狂った僕となら、上手くやれそうな気がするんだ。
寂しい君と、寂しい僕となら、上手くやれそうな気がするんだ。
手と手をあわせたいんだ。
おでことおでこをあわせたいんだ。
心と心をあわせたいんだ。
あの娘の返り血で血まみれになった君を抱きしめてあげたいんだ。
「君の血じゃないよ」、そうささやいてあげたいんだ。
たとえ、ソレが、僕の独りよがりでも、一方通行でもいいんだ。
だって、僕がそうしたいから。
もしも、君が僕を受け入れてくれるのなら、ソレほど嬉しいことはないだろうけどね。


・・・なんでそんなに怒っているの?
・・・なんでそんなに泣いているの?
親友だと思いこんでいたあの娘に裏切られたから?
仲良しだと思いこんでいたあの子達の交換日記から外されたから?
馴染んでいたと思いこんでいたクラスメイト達からいじめられたから?
わかったよ・・・僕が!!
憎い奴らを!!
全部!!
殺して!!
あげるよ!!
だって、君の憎しみと悲しみで歪んだ顔を見たくないから。
一度きりでいいから、君の心からの笑顔が見たいんだ。
きっとかわいいんだろうなあ。
きっと素敵なんだろうなあ。
そのためになら、どんなことだってするさ。


セカイの人間を殺し尽くして、君と僕が二人っきりになった時、ソレでも君の憎しみと悲しみが消えないのなら、君のお気に入りのカッターで僕のことも殺してほしいんだ。
だって、殺されるってことは、少なくとも、親友だと思いこんでいたあの娘と同じくらいの仲ってことだからね。
・・・もしかして僕は殺される価値もないのかな?
君のことを思っていろいろやってきたのに、全て空回りだったのかな?

そうかもね。
今まで生きてきて、僕は誰からも必要とされたこともないしね。
でも、一度でいいから誰かに必要とされたかったんだ。
もちろん誰でもいいってわけじゃないよ、君に必要とされたかったんだ、君にだけ必要とされたかったんだ。
・・・少なくとも僕にとって君は必要だったんだからね。
ソレだけはおぼえていてほしいんだ。
君が僕を殺してくれないのなら、僕は、君があの娘を殺したお気に入りのカッターを使って、君をおきざりにして死ぬことにするよ。
じゃあ、さよならだね・・・
おしまい。


未詩・独白 ネバダガール Copyright うおくきん 2007-03-10 12:50:07
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