ひとは優しくなる
千波 一也
別れの時刻を知ったとき
ひとは優しくなる
すなおには
明かせなかったこころをもって
朝はかならず来るのだと
ようやく夢は
ここから
近く
ありがとう、
すべてのひとつは
生まれることの
水音だった
ね
似すぎたものに戸惑わないで
届かぬ空にうなずいて
守るべき抵抗を
つかむ
ため
いつかの夜に許したことを
いまならわかる
おそれの末と
都合のような
頼りの果てなら
そこへと帰る道など
ない
闇に塗られる筈もなく
それすら奪えば
嘆きは
曇り
知らないままでいたかった
子どものままで、と
うそぶくたびに
乾く風など
送り、遅れてしまえる日々は
未完のつなぎめ
もろくも
強く
またいつか、
つづきの言葉を忘れたふりで
ひとは微笑み
荷をかわす
別れの時刻を知ったとき