ひとは優しくなる
千波 一也



別れの時刻を知ったとき
ひとは優しくなる


 すなおには
 明かせなかったこころをもって
 朝はかならず来るのだと
 ようやく夢は
 ここから
 近く


ありがとう、
すべてのひとつは
生まれることの
水音だった



似すぎたものに戸惑わないで
届かぬ空にうなずいて

守るべき抵抗を
つかむ
ため


 いつかの夜に許したことを
 いまならわかる
 おそれの末と

 都合のような
 頼りの果てなら
 そこへと帰る道など
 ない
 
 闇に塗られる筈もなく
 それすら奪えば
 嘆きは
 曇り



知らないままでいたかった

子どものままで、と
うそぶくたびに
乾く風など



 送り、遅れてしまえる日々は
 未完のつなぎめ
 もろくも
 強く



またいつか、
つづきの言葉を忘れたふりで
ひとは微笑み
荷をかわす

別れの時刻を知ったとき









自由詩 ひとは優しくなる Copyright 千波 一也 2007-03-06 08:22:06
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