髪留め
vallette

心に指があるとするなら
その指先から壊死していくような感覚
目の前には絶望がぽつんと置かれていて
それをただ眺めている私がいる
全てが客観的で、不親切で、そして現実だった

車に轢かれて潰れた猫からは
生きていた証がぐしゃり、と溢れ出していた
きっと誰かがアレを埋めてくれるだろう
------たった今、4人目の通行人

心に鍵をして、感情を閉じ込めて
必要なときに出そうなんて
そんな理想、かなうはずもない

鍵は大切なものを守るためにある
同時に鍵は危険なものを閉じ込めるために

私の鍵はもう壊れてしまった
押し殺したはずの感情がとめどなく流れ続ける
これが私の感情なんだ、と浸れた時間は一瞬で
大きすぎる感情は、洪水で荒れ狂う川のように
私の意識も、体温も、全て奪っていった

私はもう空っぽで、冷たかった
この先にあるものなんて見たくもないけど
私の瞼はゆっくりと閉じていく
最後に見えた光景は
血と泥に塗れた手と、猫の墓


自由詩 髪留め Copyright vallette 2007-03-05 22:45:40
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