ワールズエンド・スーパーノヴァ
Six

土星のお姫様は
ある夜の街角で
覗き込んだ望遠鏡のガラスに
自分の故郷が
小さく映っているのを見て
自分が記憶喪失であったことを
思い出した
と言った

それから
生のレモンにむしゃぶりつき
塩をちろっと舐めて

「でもあたしはさそり座なのよ」

と言って
テキーラを飲み干した

なんでも時々
さそりの幽霊が
彼女の髪にくっつくことが
あるあらしい

その他には
オーラルセックスだけで
いとも安易に
こんな所までやって来たことを
少なからずも後悔している
と言う

「でも後悔先に立たずよねえ」

などと
考えに耽るお姫様の髪に
半透明のさそりの幽霊が
ちょっと変わったアクセサリーみたいに
くっついているのを
発見したけれど
お姫様はそれには気付いていない

ここが世界の果てなのだと
素直に信じてやって来たのに
だなんて
悲しい話になりそうな雲行きで
どうにも面倒くさく
やりきれぬ

月よりも遠い土星には
当分帰りたくない
世界の果てに行く翼など
待っていても見つからないから
自分で歩いて行ってみるわ

きっちりの勘定を
カウンターに残して
お姫様は立ち去った

幽霊のさそりにも
毒はあるのですか?
それは質問できなかったことで
多分僕は
やきもちをやいていたのだと
今更ながら思う


自由詩 ワールズエンド・スーパーノヴァ Copyright Six 2007-03-05 08:55:10
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