渦巻二三五

いっぽんの木は森にまぎれ
ひとつの屍は累代の死にまぎれ
かすれない文字が積み重なることばにまぎれ
わすれることをゆるしながら
不意打ちのように
わすれたということを思い出させる

―――膨大さゆえにようやく朽ちてゆく記録

生きた証ではなく
確かに死にましたというしるし
金魚の墓 蝶の墓
猫の墓 小鳥の墓を
たてなければならなかったように

森にまぎれるいっぽんの木のように
墓地のなかにわたしの墓を

生きてきたそのことをもてあまさないよう
そしてわすれてしまうよう
ただし 死はしっかりと記録されるよう
それは定められている


自由詩Copyright 渦巻二三五 2007-03-04 00:54:45
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