そめられる鳩
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駐輪場で鳩がむねを撃たれて
仰向けに休んでいる
白い翼をとじ
両足を揃えてたたみ
なにを見ているのか
つめたい檻の外へ
まばたきを急ぎながら

その心臓は重すぎる
あかをはき出しながら
かかえて運ぶには
愛はこの肩で
とっくにすりきれてしまった
おまえを飾る
太陽のねむり足りないひかり

仕事にいかなくちゃ
朝日のほうへむかって
そして、わすれよう
おもい出も
そのピンクのくちばしでくわえて
まんまるい目で
たったひとつの
真円につられて飛ぶんだ
そして波のえだに届いた
つばめのゆめを見る

これで最後にしよう
おまえのことを絵にするのは
いつもまだらな空にうかんで
踊っているおまえだから
仕事中も
食事しながら
秋桜に寄り道して
タイム・カードをつき刺した
ふちどりのあるまぶたが
においをあげてふるえる
いちどきりのいのちを休めば
つぎはいつだか分らない
形見のクロスを空に切って

おまえと目があう
あたらしい時が絶えない
おまえは
たしかにうなずいた
けれど
いっぽんの絃がどこかとおくで
触れた
何かが
見えていた

しげみではべつの鳩が
くびをのばして待っている
おまえはしずかに染められながら
歪んだ車輪で回転して去る
労働者の列に歌をうたった
透明で
もう錯覚しながら
風がふくたび
これで別れだと






自由詩 そめられる鳩 Copyright soft_machine 2007-03-03 19:38:35
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