翳り (かげり)
こしごえ

西日のくれないに照らされた
誰もいない部屋の
あの日は永遠に暮れずに
私を傾きつづけて

太陽電池式腕時計の刻みつづける
秒針の先にひっかかっている
スープに影はささないでいる

静かです
こんな時はいつも
肺をみたす夕暮れの匂いが
吐息で色づいて

時は一様に開放されているはず
ここにはいられない
風かしら
うなじがしろく火照る
どこということはない
奥のほうで気配がそよぐ
星の原

水晶回路に
接続された
かすかな音が冷たく光り
正確に渡っていく
私はすこしずつとけて
こおろぎの翅と歌う
黒曜石の深奥で胎動して
銀河の墓標となる

ごおうごおうっと遠くで唸り声
私の知らないところで
今日が暮れてゆく









自由詩 翳り (かげり) Copyright こしごえ 2007-03-03 15:26:53
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