翳り (かげり)
こしごえ
西日の紅に照らされた
誰もいない部屋の
あの日は永遠に暮れずに
私を傾きつづけて
太陽電池式腕時計の刻みつづける
秒針の先にひっかかっている
スープに影はささないでいる
静かです
こんな時はいつも
肺をみたす夕暮れの匂いが
吐息で色づいて
時は一様に開放されているはず
ここにはいられない
風かしら
うなじがしろく火照る
どこということはない
奥のほうで気配がそよぐ
星の原
水晶回路に
接続された
かすかな音が冷たく光り
正確に渡っていく
私はすこしずつとけて
こおろぎの翅と歌う
黒曜石の深奥で胎動して
銀河の墓標となる
ごおうごおうっと遠くで唸り声
私の知らないところで
今日が暮れてゆく