桜、わすれていく
たりぽん(大理 奔)

色の名前を忘れていく
最初に忘れたのは
花の色を真昼の
それにする太陽
そして、ものまねの月

雨の色を忘れていく
濡れるものとそうでないもの
雲の内側では透明の
感傷にも似た
匂いだけは忘れないのに

雪の色に似ている
降り積もる時の
出会いの色
とけていくときの
あきらめのような色

   春の温度をかたどった
   舞い散るものの
   旅立ちの色
   路地裏に吹き寄せるときの
   別れの色

まぶしい闇に
夕日を失ったこの街角で
ああ、もうすでに
色の名前を忘れていく

君の髪で揺れていた
野で摘む花の
そんな
ちいさな名前を




自由詩 桜、わすれていく Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-03-03 00:00:31
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