さくらいろ
銀猫

サテンの光沢まばゆく
風が雲の緞帳を翻すとき
ひととき白日夢に眩む

まだ蕾、とも呼べぬ小さな膨らみは
幼すぎて花の名前を知らない

その風の名残のなかで
わたしは繰り返される春を
絵にしてみるが
思うのはさくらばかり

芽吹きの淡い緑色や、やわい草の匂い
それらの思惑より
たった数日を繚乱する
さくらに惑う

はらら、花びらは
恋うる瞳の潤みに何処か似て色めき
うすい、うすい赤は
すべてのいのちを恋に誘う


パレットのうえで苺を潰そう
切ない匂いのする白の絵の具で
ひかりを描くために

(風が)

乾かぬうちに
花びらが絵になり
去り際のかなしみだけが
手足をもがれてふうわり、
古木の足元に埋まってゆく

(春が)


自由詩 さくらいろ Copyright 銀猫 2007-03-01 17:33:20
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