あっかんべーの事情
佐野権太
(また、お出かけなんだって、つまんない
保育園で唯一娘のことを
好き
と言って遊んでくれた友達は
先月突然、家庭の事情で引っ越してしまった
この町にも
あの町にも
ひしめく家並み
(あちた、くるよ、ね?
見あげる瞳に
微笑むことしかできない、僕の事情
嫌い
と言う子には
あっかんべーをするのだという
そのかなしみを
止めることもできない
おや、ってなんだろ
きょーいく、ってなんだろ
がまん、がまん、がまん
僕はいったいどこに向かって
下のまぶたを引っ張ればいいのか
自由詩
あっかんべーの事情
Copyright
佐野権太
2007-03-01 08:22:35
縦