さよなら
水在らあらあ




今、踏んだ、枯れ枝
その中に眠っていた想い
遠ざかってゆく
永遠に

今、放った、貝殻
僕の手のひらの温度を引いて
遠ざかってゆく
永遠に

雲は遠くの水平線に砕け
その下を一艘の船が行く
何を積んでいるのか
何を引きずっているのか

長く長く引き伸ばされた致命傷だ
そうやってみんな溺れてゆくんだ
そうして日はいつも傾いて
いつまでも傾いて

誰のことも悪く言わないよ
おじいちゃんとおばあちゃんが手をつないで歩いている
誰のことも悪く言わないよ
銀河のことも この世の煉獄も

透明に透けてゆく僕のナイフには
たくさんの物語が刻まれている
それでもリスは木の実を集めて
ゴリラはリスが割れない木の実を割ってやればいい

バンビを、食べたよ
おいし、かったよ
ブラックベリー入りのブラウンソースに
その肉は静かに漬かっていたよ

どうやって殺されたんだろうね
七色の散弾で
打ち抜かれたのかな
僕だったらそうするよ
いつか君を打ち抜いたように

ときどき体から
目から 口から
血が、愛が出るんだ
天国は だから
僕たちのものだよ
この世の中でどこにもいけなくても
天国は だから
この透き通るナイフで
何回も涙を吸ってまだ錆びないこのナイフで
入り口を開けてやればいい

君の周りにいくつもの流星が炸裂して
僕はそれが本当に嫌で
早く暖かいおうちに帰りたかった
僕の作ったオムライスももう冷めちゃうから
ケチャップで描いた笑顔も泣き始めるから

手のひらと
手のひらを合わせて
春の風が吹いて
引き離したら
そこには小さな虹ができて
それを
ずっと見つめながら
二人で
驚いたような
泣きそうな顔して
永遠に
遠ざかってゆくんだ








今、歌った、涙
君の心臓の温度を保って
遠ざかってゆく
永遠に











自由詩 さよなら Copyright 水在らあらあ 2007-02-28 05:49:58
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