その日はとても寒かった
ぽえむ君

その日はとても寒かった
少し前に降った雪が残る
ある日の日曜日
働きづめの自分にとって
朝から寝ていたかった
そんなことをおかまいなしに
父は車を出せと
何やら急いでいるようだった

その日はとても寒かった
家族三人が車に乗り込む
言い出した父は
いつものようにもう
後ろの座席で寝そべっている
車に乗るときに渡されたのは
何の当てにもならない
広告に示された地図だった
かなり遠そうだった

その日はとても寒かった
雪道に注意して
地図に従うよりも地図の方に向かって
ひたすら車を走り続ける
父はもうぐっすりと寝ている

その日はとても寒かった
何度か道を間違えながらも
ようやく目的地に着く
何もない住宅地
最初に車から降りたのは父だった
そそくさと歩く父の後ろに家族が歩く
売り出しの新築の家を父は眺める
ほんの数分だけだった
その住宅街の事務所に行き
案内を求めることなく
購入手続きをしていた

息子の自分は今
その家でこうして詩を書いている

その日はとても寒かった
父だけは熱かった


自由詩 その日はとても寒かった Copyright ぽえむ君 2007-02-27 22:42:12
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