贅沢な冒険
ぽえむ君

いい天気だからというわけでもなく
財布も携帯電話を持たずに
外に出てしまった
どこか冒険だ
いろいろな店の中に入る
ドアーが開く度に
店員が自分に気がつく度に
ていねいな挨拶をしてくる
自分はお金は持っていないんだとは言えない
そういう時に限って
不思議と高価な商品の売り場に足が向く
少しでも立ち止まって見ていると
店員が近寄ってきて
ああだこうだと説明を始める
全く買えないような金額であっても
そんな程度のものかという顔を保つのは
なぜだろう
お金がない方がお金持ちの気分が味わえる
デザインが気に入らないのでまた今度
そんなことを言ってその場から離れる
なぜかすがすがしい
店の出口では何かのキャンペーンだろうか
女の子が風船を配っている
無料であればもらっていこう
冒険の戦利品だ
自分に似合わない風船を片手に
帰り道を歩く

その風船は今では机の片隅で
しぼみきっているが
眺めては高価なものを買った気分を楽しんでいる


自由詩 贅沢な冒険 Copyright ぽえむ君 2007-02-24 10:56:58
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