春のこの夜、誰よりも君を愛す。
まどろむ海月






家出したまま三日も
戻って来なかった日があったね
最近やたらにぼくの背中を傷つけるし
君の綺麗な爪はひどく痛むんだよ


確かに僕は毎日遊んでいるさ
でも誰と遊んでも
君のことは忘れない
誰よりも君を愛す

と言ったら
君は憑き物が落ちように
すっかり安心した顔で眠ってしまった


庭で暴れているのは誰だろう
きっと聞き耳を立てていたんだ
僕のセーターを振り回して怒り狂っているのだ
あの調子じゃあ花も草もきっと滅茶苦茶だろう

毎日一緒に散歩しているのは誰
朝焼けの下でも黄昏の中でも
雨の日も強い風の日も
こな雪がちらつくあの日だって
いっしょに走ったり抱きしめたり
あんなに大事につきあっているのは誰

それなのにたった一言
誰よりも君を愛す と言ったのを
聞いてしまったからといって
あんなに怒り狂うなんて


君はストーブの前で
丸くなって安らかに寝息を立てている
そんな君のことを思いやってもいいはずなのは誰



明日は誰をなぐさめよう
いっぱい遊んであげて

僕の匂いが大好きなのは誰
風呂に入ってなくても

そんな誰でも僕は好きだ



匂宮と薫からの
激しい愛の板挟みに
自殺未遂にまで至った浮舟の心が
男のぼくにわかるはずはないけど
いったいどうしろというんだ
もうわけがわかんないぞ!



恋するものの遠吠えが聞こえ
変に寒いような暖かいような
夜が更けていく

苦いような甘いような気持ちを抱いて
浅い春の浮き橋を辿りながら
夢に夢を重ねてゆこうと思う













註(「君」と「誰」は愛猫・愛犬の名前です、もちろん。
   春の始まりに、確かに私の頭もちとゆるんではいますが、
   ゆめ誤解などされませんように)


自由詩 春のこの夜、誰よりも君を愛す。 Copyright まどろむ海月 2007-02-22 20:52:18
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