赤い糸遊び
なかがわひろか

あんたはほんまにきれいに切りよる
すうっていう音が聞こえてきそうになるわ
あんたの血はきれいやな
そこに顔を映すとき
一番うちが奇麗に見えるわ

あんたの切り口を見てると
だんだん吸い込まれたくなるわ
そしたらうちが血の代わりになるんやね
そしたらうちがあんたの身体を駆け巡るんやね
なんか素敵やね
そんなんできたらええのにね

あんたもうちもまだ幼なあて
ただきれい、きれい言うて遊んでたけど
青白い顔して
真っ赤な湯船に浸かっとったら
やっぱ頭おかしい思われるんかな
一番きれいな水に浸かって
一緒に戯れてるだけやのにな

お互いの小指の先をちょっと切って
お湯の中で手ェつないで
赤い糸や言うて
そんなん言うてるだけやのにな

おっきなったら
一緒になろね
今のうちにあんたの手ェに
うちの血を刷り込んどくわ
他の女の穢い血に
汚されへんように
ちょっとした契約や

気持ちええね
真っ赤な湯船で
なんか身体奇麗なった気ィするわ
お湯流すんもう少し後にしようや
まだ小指と小指
つながってるで
へたくそなあや取りみたいに
絡まってるわ

(「赤い糸遊び」)


自由詩 赤い糸遊び Copyright なかがわひろか 2007-02-22 01:42:19
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