瑠璃
海月

(砂浜に適当に流れてきた流木で文字を書く)

瑠璃
君はまだピアノを弾き続けているのだろうか?
何度もやめたいと言っていたけど
その度に僕は君を半ば強引に説得して続けて
僕がいない時にやめてなければ良いのだけれど

瑠璃
君はまだ臆病のままなのだろうか?
何かに怯えて人を信じない
君の心の隙間に入るまで何時間も扉の前で
君の話を聴いていたっけ?
今となれば善き思い出

瑠璃
君はまだ僕を待ち続けているのだろうか?
君の注文に耐え切れずに
ちょっと買い物に行くと言って家を飛び出して
二度と帰らない僕の事を君は怒っているのだろうか?

瑠璃
君の誕生日に届く歳の数だけの薔薇の花
あれは責めてのも罪滅ぼしの為に
僕が君に送り続けている
そんな事を君は知る筈もない

瑠璃
君の家の前を深夜に意味もなく行ったりする
帰りたい、帰りたいけど
どんな顔をして帰れば良いのか解らずに
結局、部屋の明かりを見て家?に帰る

瑠璃
どうして季節は巡るんだろうね?
その度に君との思い出を少しずつだけど忘れてしまう
人として当たり前の事だけどそれが悲しい

瑠璃
君の声を聴きたくて何度も受話器に手をかけて
後は番号を押すだけなのに何故か押せないない
だけど最近は後一つの所まで来た

瑠璃
君の名を忘れたいと何度も思った
その方が今より楽になれる気がする
だけど忘れようとすればする程に辛くなる

瑠璃
君の家の表札が変わった事が驚いたよ
もう、その場所に君は住んでなくて
知らない家族が住んでいてさ
僕は大家に話しをしたら
君は亡くなったって
後の話は覚えてない

瑠璃
君の駄目な所を僕は集めてしまったよ
もう、会えないと思うと
君の顔が声が名を
見たくて聴きたくて呼びたくて
だけど、どれも出来なくて
何か馬鹿みたいだろう?

瑠璃
瑠璃色の海の許で僕も君の場所に行くよ

(砂浜に書いた文字と僕は優しい波と共に運ばれて消えた)



自由詩 瑠璃 Copyright 海月 2007-02-21 23:58:50
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