きれいな波紋
水町綜助

池にホースが浮かんでる

死んだ蛇みたい

そこに小鳥が二羽とまって

水草をついばんでる

それの起こす振動が

波紋をゆっくり広げてくよ

穏やかな音楽みたいなその響きは

死体をついばんで生まれた音

死体をついばんで生まれた音

ねえきれいなことってあたしすき

そんな言葉をきいた気がする

きれいなものってまじりっけのないもの

そんな言葉をきいた気がする

きれいなものはきれいからうまれるの

そんな言葉をきいた気がする

穏やかなゆらぎは

死体をついばんで生まれたもの

死体をついばんで生まれたもの

おじさんがやってきて

たくさんのお菓子を小鳥に投げる

波紋がぐちゃぐちゃになって

そしてそのお菓子の数だけの波紋が広がる

ひとつひとつがちいさい波紋は

ひとつひとつ同じだけきれい

そのひとつが

ゆっくり広がっていけば

やがて池いっぱいに広がるだろう

でもひとつが隣のひとつにぶつかって

消えちゃったよ

そうしてお菓子のつくった波紋ぜんぶ消えて

池のうえはゆらゆら揺れてるだけ

もう池のうえはゆらゆら揺れてるだけだよ


自由詩 きれいな波紋 Copyright 水町綜助 2007-02-19 18:24:08
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