ふゆのさかな・2
銀猫


不愉快な覚醒が
北寄りの強い風で更に増して
両手の無意識がコートのポケットを探す
ひんやりとした裏地や
捨て忘れた入場券に
指先は触れているが
今はそれより風から逃れたい


月曜日がいつから巡っているのか、とか
少し白い思考に身を委ねてみると
水槽に戸惑うちいさなさかなになる

人垣の水草を掻き分けながら
濁りかけた水を押しやるといって
透明は待っておらず
僅かに流れのある場所に出るだけだ

さかなは清流を知らない

むしろ
強い流れと
まるくなって押し寄せる空気を
怖いと思う
さかなはちいさな体躯のままで
ちいさな生を終えるだろう

透明は遠く
さかなを知らない
清流は強く
さかなを知らない


水草が
今日も絡まりながら
揺れている





自由詩 ふゆのさかな・2 Copyright 銀猫 2007-02-17 13:06:24
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