夜未記
木立 悟





降りつもる首しめるよに降りつもる信じることのできぬしあわせ



ひとつまみふたつまみして倒れゆく小さな夜の集まりの塔



家の背にあふれはばたき打ち寄せる星に至る火はらむ冬原



傷をなめ傷を這う舌沈みゆく治らぬままに熱さのままに



傷と葉に傷と葉にただ降りつもる風を刻んでしたたり落ちる火



行く道のすべてが帰る道の色どこへ帰るかわからぬままに



血の跡が旗のかたちに臥す夜に動かぬ船の汽笛のみ鳴る



暁を浴びても朝をいだいても離すことさえできぬ夜の手









短歌 夜未記 Copyright 木立 悟 2007-02-16 10:06:51
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