完成
水在らあらあ

僕が働く村は 小さな漁村で

大工仲間のゴルカ君と ベンチに座ってお昼ごはんを食べる
ゴルカ君の奥さんのロシェさんはお料理の先生で
ゴルカ君の持ってくるお弁当はいつもキラキラしている

ゴルカ君はだいたいオレンジ一個かまたはりんご一個
くるみを少々 デザートに持ってくる
くるみは素手で コンクリにたたきつけて割る
オレンジの皮を うまく円盤型に剥いていっては
小さなフリスビーみたいに港の水へ投げる

僕らはいつもだいたい決まったベンチで
とおりすぎる貨物船などを見ながら とりとめもない話をし
道行く人たちに挨拶しながら食べる
道は一本しかないから みんな知り合いになる
ゴルカ君は食べるとすぐにおならを連発し始める
それを聞いて僕は笑う
最終的にいい加減にしてくれという

ゴルカ君は8人兄弟の7番目で
その大家族ほぼ全員地元に住んでいる
ゴルカ君は地元からほぼ出ない
ゴルカ君は地元を愛している
僕と正反対だ

ゴルカ君は携帯電話を持っていない
ゴルカ君はパソコンを知らない
ゴルカ君はキャッシュカードも持っていない
僕と正反対だ

いつか そう ゴルカ君の誕生日に
ロシェさんが三歳になる彼らの娘を連れて
お弁当をもってやってきた
僕の分もあった
奥さんに似た 真っ青な目 真っ黒な おかっぱ
可憐な 内気な 女の子だ 
花柄のワンピースを着ている

お昼を食べて プラサを抜けて工房に帰る
ゴルカ君は娘を肩車している
そうか そういうことか
ゴルカ君は 仕事もできるし あほみたいな力持ちだけど
いつも薄い感じだった
兄弟が多いからかと思っていた
今 隣を歩くゴルカ君は 娘のマヤレンちゃんを肩に乗せて
完成している
マヤレンちゃんは小さな手をゴルカ君の坊主頭にのせている
ゴルカ君は大きな手でマヤレンちゃんの両足をにぎっている
陽射しはやわらかで みんな笑顔だ


ゴルカ君は木を愛している
ゴルカ君は海を愛している
ゴルカ君は冒険にあこがれている
ゴルカ君の愛読書は白鯨だ

そう 僕と一緒だ









自由詩 完成 Copyright 水在らあらあ 2007-02-15 09:48:02
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