師弟
まんぼう

師と呼ばれる男と
弟子が出会ったのは
ゴギと呼ばれる岩魚が棲む渓流で
両岸を繁みに覆われた小さなポイントだった
弟子は師の手造りルアーを3個藪の中に投げ込み
その夏最後の渓流釣りを終らせた
僕はタバコを吸いながら夕暮れの川にいた

師弟と僕はいつも川や海や湖で遊んだ
弟子はいつしか腕を上げ
一本の短いルアーロッドで
全ての魚種に対応する奇怪な技を極め
ある日師を超えた

爾来十年
弟子は今でも師と呼び
師はむず痒く笑って僕を見る
今ではすっかり忙しくなった師は
仕事の合間を縫って夜釣りに出かけ
そんな夕暮れ時には必ず弟子を誘う

針に餌を付けておけば何か釣れる僕は
ついに誰の弟子にもなれなんだが
今夜も師弟と一緒に星空の海にいる


自由詩 師弟 Copyright まんぼう 2004-04-14 10:01:31
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