羅針盤は故郷を知らない
たりぽん(大理 奔)


道の先をいつしか
岬と呼ぶのでしょうと
白い幾万もの手が
砕けては戻っていく
届かない場所に
北端という称号を与えて
みんな満足して
羅針盤の声を人は夢に見るのです

   根無し草のわたしには故郷がない
   土地にしがみつかずにながらえて
   いつしか還る土にあこがれた
   冬空が重く、波頭が白く
   ギラリと刃物
   胸を刺すね
   死んでいきたいね、静かに
   あなたが最期まで住む
   この街を故郷と小さな声で
   つぶやきながら
   
そこはいちばん北に近い
と思いこんでいる場所
北というのは
羅針盤のことばだから
そこにむかうことはできても
たどり着けない
だから焼かないで
還りたい、
故郷にしてと耳元であなたがささやいた
岬のあるどんづまりの街に
遠鳴りは
砕けて




自由詩 羅針盤は故郷を知らない Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-02-12 00:38:11
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