「 曖昧なわたし。 」
PULL.
気が付くと、
また曖昧なものになっていた。
前回はあいまいで、
その前はアイマイだった。
…ような気がする。
これもまた曖昧である。
曖昧なものになったわたしの上や横を、
曖昧でないものたちが通り過ぎる。
彼らはみな忙しそうに、
せかせかと手足を動かし、
わたしの周りを水のように通り過ぎてゆく。
わたしは曖昧な岩のように、
いつまでもそこに立っている。
ひとり、
曖昧でないものが、
わたしの中を通り過ぎていった。
彼はわたしを通り過ぎた後、
ふと立ち止まり、
振り返った。
ほんの数秒、
いや数時間かもしれない。
時間の感覚も曖昧になった。
彼は立ち止まり、
わたしを見ていた。
力なく首を振り、
暗い溜息をひとつ残すと、
彼は流れの中に戻っていった。
二度と振り返らなかった。
暗い溜息は流れ乗り、
わたしの中で少し留まり、
やがて消えた。
曖昧でないものたちの流れは、
いよいよ急になり、
ごうごうと音を立てて、
わたしを通り過ぎてゆく。
水嵩が増した。
溺れてゆく。
そう、
曖昧に想った。
了。
自由詩
「 曖昧なわたし。 」
Copyright
PULL.
2007-02-09 02:37:13
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