ひとつ 深く
木立 悟
雪が
裏側の碧を見せぬまま
降りつづけ
積もりつづけている
光が夜を昇る声
水を斜めに振り向かせる声
器のかたちに流れ去り
ふたたび器に満ちてゆく声
世界を横に引く音がして
何かが見えたはずなのに
さらに横に引く音がして
何かは見えなくなってしまう
まさぐるたびに
沈む水音
触れたことさえ
忘れる碧
ずっとそばにいた見えないものが
どこかへ去ってしまったのを知る
いくつかの景がひとつになるとき
火が生まれたままの姿になるとき
小さな光の指を詠み
小さな光ははしゃいでいる
遅れて到く祭たちの声
過重の夢のあかしの碧
高く積まれた灯が立ちならび
ひとつひとつが闇へ近づく
世界の扉にたたずむ碧
はざまに声を吹きこんでゆく