サナギ

そういや桜の季節ってあったな
夜中でもぼーっと光ってるあれ
雨だとざーっと流れるあれ

そういや
ずっと昔じいさんに会った
俺の墓標を見て桜の樹だと言いやがった

ちょっと待てじいさん
年下だからってなめんな
俺の墓標が桜の樹だなんてそんなつまんねえオチがあるか
いや
桜の樹には罪はない
桜の樹の下には死体がなんて話がはびこり過ぎたから言ってるんだ
俺の墓標はそんな素敵なもんじゃねえそんなありふれたもんじゃねえ

だいたいな
桜の樹が墓標だったらどうなる
桜だけじゃない樹全部が墓標だったらどうなる
アマゾンなんてでっかい墓場じゃねえか
まあ色んな生き物が生きたり死んだりしてるから
ある意味でっかい墓場なのか
街路樹の道も墓場で
公園も墓場
墓場で思い出したけど
昔は墓場ってラブホテルの代わりだったんだよな

子供は来ないし
暗いし
静かだし
適当に生い茂ってて

なんかすげえよなあ
死体の上で生の営みだぜ
意外に興奮すんのかな

まあそれは置いといて
だから俺の墓標が桜の樹っていうのはなしだぜじいさん

俺の墓標なんか
ラーメン食っててうっかり取れた
奥歯の詰め物なんじゃねえかと思う



自由詩Copyright サナギ 2007-02-04 22:53:45
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