ミス・ブラックマジック
佐羽美乃利

黒ずんだ葡萄を食べながら
次は何を手に入れようかと
君は考える

あやしい美貌も黄金も宝石も
すべて望むものを得たけれど
安らぎの境地には冥王星より遠く

もっともっと
いっぱいいっぱい
地上のものみな
独占したくて

君は灰色の舌の蝙蝠に貢ぎ
優しげな妖怪と契約を交わす

ミス・ブラックマジック
愛さえも魔術で捏造できると
信じる君の洞窟めいた瞳

誰もが
夢は夢のまま終わっても
あきらめと希望を繰り返し
健気に生きているというのに

君は全部が思い通りにならなきゃ
気がすまない

自分の欲望のためだけに
生命を消費すると
早く枯死するという
宇宙の法則を知らず

倒壊の日に向けて
走り続けるのを
止めるものもなく

もっとたくさん
あれもこれも欲しいと
跪いて魔物に祈りを捧げる
ミス・ブラックマジック


前世のデータでは
君はとてもさびしい子供だった





自由詩 ミス・ブラックマジック Copyright 佐羽美乃利 2007-02-04 00:40:35
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