「 関係ない関係。 」
PULL.







恋人じゃない。
そんなのじゃない。
電話が掛かってくれば、
真夜中でも飛び出してゆく。
そんな関係。

友達でもない。
名前も住所も年齢も、
なにも知らない。
電話番号とキスの相性が合う。
それだけ知っている。
それだけを知っている。
ただそれだけの、
それ以外なんの関係もない関係。

電話がない。
掛かってこない。
いつまでも待って、
眠れない夜が続いた。
ある夜テレビを付けると、
彼女がいた。
どこのチャンネルにも彼女がいた。
知らない名前と住所と年齢の、
彼女たちがいた。
街では、
みんなが知っていた。
みんなが彼女を知っていた。
だけどみんなは知らない。
なにも知らない。
彼女が、
どれだけキスが上手くて、
あたたかい躯をしていたのか。
みんななにも知ろうともしなかった。
関係なんてなかった。


そうして忘れていった。
みんな忘れていった。


もう電話は掛かってこない。
それだけ知っている。
それだけを知っている。
ただそれだけの、
それ以外なんの関係もない関係。
だった。












           了。



自由詩 「 関係ない関係。 」 Copyright PULL. 2007-02-02 18:29:03
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