椅子
サナギ

椅子の形の墓標だったらいい
二人がけ
いや
ベッドみたいな

そこに俺は眠っているか
掘ってみなけりゃ分からない
だが
椅子の下を掘る奴なんていない

俺の墓標に愛し合う二人が座り
愛を語る
ばかみたいに二人きりの世界に入り込んで

俺の墓標に疲れた者が寝転がり
空を見る
あほうみたいに一人きりの世界に入り込んで

たまに俺はあああと呻いて
二人はびっくりして抱き合う
一人はきょろきょろする

誰も座らないで暇にしていると
ふられたばっかりの奴がやってきて
バカヤロウと落書きして行きやがる

いいぜ
そのかわりお前は絶対に俺の墓標に座るなよ
お前がいつかすんげえかわいい子と歩いてしゃべって歩きつかれてふと見たら
いい感じの椅子があっても
そこにはバカヤロウと書いてある
誰が書いたんだろうねはははってお前は言ってそっとハンケチかなんかひいて
その子と座ろうとする
そしたら俺の墓標は


ここから先は俺だけのお楽しみだ

みんなは向こう向いててくれ


(中略)


それで奴はぎゃあぎゃあ泣きわめきながらすんげえかわいい子もほったらかしにして逃げ出したんだが
誰が何をしたかなんて
掘ってみなけりゃ分からない
だが

椅子の下を掘る奴なんていない



自由詩 椅子 Copyright サナギ 2007-01-29 13:11:19
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