雪虹のワヤン
たりぽん(大理 奔)

雪が来ないから だろうか
遠い対岸の君を思い出してしまう
風船のひもをつかむ かのように
手を繋ぎあった昼下がりのことも
雪虹を見た冷たい夕暮れも

   私の影は黒いよね
   青い光でも、赤い光でも
   ちかちかする街の明かりでも
   私の影は黒いよね

真冬の木漏れ陽のように
長い髪にからまる星空は旋律
瞳が見えないほど近くで
くちびるに隠されて
吐息の温度になる

   深海を住処にする魚だね
   浅瀬では体がはじけてしまう
   水面すら遠い境界線に水中の虹
   それでも影は黒いよねと

雪が近づくと いつも頭痛だ
私も気圏の底の小動物
耳の奥で眉間の隙間で
さむい、さむい、寒いと
降り積もらない場所に降りしきる

   遠い対岸の場所も忘れたね
   顔もだんだん思い出せなくなる君に
   風船のような記憶のひも
   手放してしまった手のひら

雪虹をつかまえようとすると いつも
そこにむかってのびている
踏みつける自分の影絵
ワヤンはセロファンの色で彩られ
物語の中に、封印する黒




自由詩 雪虹のワヤン Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-01-27 23:47:29
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