ピッピ

君がくるぶしを噛んだら、透明な飴玉になったので、吐いて捨てた

ここの所は天気が良すぎる夜だから、天に向かって鳴らすべきだと思った
スピーカーを上に向ける。大きな文字たちが降ってくる
下降しながら、なめらかに僕たちの知るものの形となる
階下には何もない。さえずりと呟きは僕らの中では同じことだった
言う言葉があってよかった。書く言葉が世界を埋め尽くす
未来と過去を分断している点の一部にしか過ぎない

馬がいる。僕の目には見えない厩舎の奥の方でひっそりと眠っている
存在するかも分からないのに、言葉に潰されそうだ
苦しいという言葉を喚いた筈だった。
しかしそれは、君の目から見たら、大きなあくびだった
春が淀んで、君の眉から目、唇の端までを真っ赤に染めていた
笑ったね
僕が
君が笑ったと
感じただけだけど、透明な飴玉になったので、それもどうでもよくなった

味のない飴玉を最後まで舐めていると、唾液みたいな液体がどんどん出てきて
それを飲み込んだ。雨は降っていないし、風もそんなにはないみたいだ
そういえば音楽が鳴っていたね
まるで死んだみたいに僕の中を通り過ぎていってた
そういえば君がいないね
まるで死んだみたいに僕の中を、
君の歌みたいだね
君の歌みたいだ

空気が透明で本当に良かったと思う。
ふらふらと音楽になって落ちてくる。

ざわざわしている

カプセルの中で眠りこけて、そのまま数年間が過ぎようとしている
何も変わらないのは皮膚の外側だけだった
夕刻がゆっくりと結んでいた掌を解いて、綺麗な血まみれの顔を必死に隠そうとしている


自由詩Copyright ピッピ 2007-01-27 23:37:12
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