稲妻
南 翔

闇夜


勇壮なる雷雲

其の塊は 他のかたまりの上に

覆い重なりては 雄々しく上昇し 

其れらのうねりは なぜか荘重なるものを

醸し出している

(其の荘重さにたじろいで 後退りをする)


激烈なる雷雨 

雨は 穢れを浄化するがごとく

容赦なく降り頻っては氾濫す 

排水溝はうろたえ 覚束ないありさま

(浄化の後は 眩し過ぎて何も見えない)


乱れ撃ってる雷鳴

幾度となく鳴り響いては 鳴り乱しては

節度なきことに 怒声で 叱責を轟かしている

(節度 過度のものは自由を犯す)  


華麗なる稲妻 

佳麗なる電閃 

鋭き剣は 大地を幾度となく突き刺し 

地上の罪は 逃れる術を失って 

焼き焦がれている

(罪 其の真の意義は 解けがたい) 


其れらは さながら幻夢か 怪奇か 

あるいはまた 何かの前兆を示唆するのか?


が まさしく 興味が尽きない四次元の模様

其れは 切々と胸に逼り 

其の 冷徹なものに 

其の 尊きものに

心の臓はおののく 震える 

小指の毛細管もが 余すところなく

戦慄いでいる




あゝ 然れど 

然りとて 茨の華の匂いに迷いて  

切なくて 悲しくて 愛おしくて

吐息がひとつ またひとつ漏れて

涙腺がゆるみ始める頃には

酔いが 酔いを誘うて

あゝ 此の甘美なものが心地よい と呟く 


戦慄に憂鬱を絡ませ そして悲哀を融かしては

限り無く病的な 夢幻の華を孤独の裡に咲かして 

あゝ この割がたきものが捨てがたい と呟く 


そうして 切ない舞いが 慎ましく開かれ

切ない詩が 耐え忍びて 静かに綴られる





自由詩 稲妻 Copyright 南 翔 2007-01-27 17:49:10
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