12年
野薔薇

阪神大震災。
あの悲劇から12年。
もうこれだけ時間が経ったのかと思う反面、
まだこれだけしか経っていないのかとも思ったりする。

私はラッキーだった。
震災の被災地に生まれたにも関らず、住んでいたのが山側、
そしてマンションという事もあり、
そこまでひどい被害を受けなかった。
それでもあの当時の事は未だに覚えている。
生まれ育った大好きな町が崩れていく様は残酷で、
未だに忘れる事はできない。
本気で世界が壊れたのかと思っていた。

震災後しばらく経ってから、震災について勉強した。
だけどすればするほど怖くなった。
大切なものを失った人達の体験記は、
その当時の私には本当に恐ろしかった。
密かに毎晩毎晩、もしかしたら明日このような事が、
自分に襲い掛かるのかもしれないと思っていた。
明日大好きな誰かを失うかもしれない。
この生活が180度変わってしまうかもしれない。

だけど時間とともにその恐れも薄れていっていた。
そして気づいたら、今、その当時の面影を残すものは、
殆ど消えていっていた。
辛い思い出から大好きな町が回復していく様を見るのは、
素直に嬉しい。
けれど、ただ前に進むだけじゃ何も始まらない。
過去から何かを摘み取って、初めて行き先という未来が、
見えてくるはずだから。

今はあの町からは離れた場所に居るけど、心はいつもあそこにあるから。
それを覚えて、これからもあの町と共に歩み続けたいなと思う。


散文(批評随筆小説等) 12年 Copyright 野薔薇 2007-01-17 13:03:13
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