創書日和「雪」  写真
逢坂桜


  1月のお題が「雪」と知り、真っ先に思い出したのは、あの写真だった。

  推定年齢3歳の冬の写真。

  私が、ちいさな両手を見つめて泣いている。

  人が見たら意味不明だろう。

  長い間、私にとっても意味不明だった。

  親は「素手で雪にさわって泣いた」と見たままを言う。

  それにしては、どこか釈然としなかった。

  あるとき、ふと思いついた。

  きっと私は、雪が冷たいものだとは、

  指先がちぢこまるくらい冷たく、いたいものだとは、知らなかった。

  だから素手で雪にさわり、あまりの冷たさに顔をゆがめて泣いた。

  この時の写真は3,4枚はあったはず。
  
  娘に手袋を渡しもせず、カメラを取ってきて撮影したのか、と思うと、

  いかにもやりそうなことだ、と、証拠の写真を見て笑った。

  ・・・その写真をケータイで撮影して、文章を添えたかった。

  だがその写真は、母方の実家の蔵の中の、どこかに積まれている。

  しかしあの写真のことを書いておきたい。
 
  というわけで、あえてこちらに書いた。

  「雪」を見ると「道理で寒いわけだ」とか「積もるかな?」とか浮かぶ。

  そして

  あの写真が胸の内からよみがえる。

  これからも、きっと。


散文(批評随筆小説等) 創書日和「雪」  写真 Copyright 逢坂桜 2007-01-14 03:02:45
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