気功師になれるかもしれない
千月 話子
「修行」
午後には温かくなる体
ベビーピンク の爪の肌
血が通いましたよ 私
今日も祈るように手を合わせ
指先に軽く接吻する
上瞼は慈悲深く閉じられて
朝靄の消え行く間に間に
光り射す気配を感じ
蕾のように太陽を待つ
呼吸は静かに浅く深く
やがて登り来る温もりは
手の平に満たされて
指先がじんじんと疼くものだから
ゆっくりと開いて行くのです
右の平 左の平から引っ張られるのは
手の形に伸びた蜘蛛の糸
私の指がもっと長ければ
とても とても 美しいのに・・・
うらぶれながら
引き千切られる寸前の肩幅で
送電しながら 送電しながら
待つ身を整えれば
蜘蛛糸は やがて形状を変え
空洞の円筒形に熱い層となり
押し 押しては
反発する弾力を
薄々と感じるのです
そのような日の 私の体内には
私が程好く充満し
美しい火花を放電する
気功師に なるのです
飲みかけの炭酸水の気泡が
ゆらゆらと 浮き上がろうとしています
布地に包まれた羽毛が
わらわらと さざめいて破れそうです
私の手の指は ふわふわと
・・・・しそうです
一通り楽しんだ腕は くたびれて
徐々に閉じる距離を縮め
逃げそうなゴムボール型を
押し潰すように押しつければ
指先ぎりぎりで熱くなる手の平
目を閉じて 見えない奇妙な弾力を
思う存分 楽しむのです
さぁ もう離してあげますよ
溢れる熱を外界に放ち
渦巻くように上空を飛ぶ水鳥の
群れを私の手の平は
少しずつ水辺へ戻して行くのです
さぁ もう許してあげますよ
「治療」
私が立派な気功師に
なれるかもしれない明日には
あなたの頑なな胸に風穴を開けて
背中に回したこの手の平で
弾力のある背筋を掴んでは
熱い私であなたを満たそう
あなたは 私の乳房を掴んで
その痛みに耐えればいい
微笑みながら
絶えればいい