恋あるいは衰弱について
吉田ぐんじょう

年明けからこっち
どうも調子がよろしくない
いったん種子から出たやわらかな芽が
地上の冷気を恐れて
土の中でぐずぐず躊躇うような感じで
段々衰弱してきたのである

それは君に逢わなかったから
と云うよりも多分
君に逢ってしまったからだと思う
小動物のように弱くなって
守られたがっているのだと思う
だけどそれはわざとではなくて
何と云うか本能的なものなので
どうしても止め処がなくて困っている


君から着信したメールは
意味がわからなかった
日本語が書いてあるのだけど
わたしじゃない人の名前ではじまっていた
返信はしてないけど一応
保護はしてある
送信箱は君の名前で埋め尽くされて
まるで呪っているみたいだ

わたしはブーツにつま先を差し入れ
矢張り思い直してスニーカを履いた
紺色のリーボック
今からハローワークへ行かなくてはならない
携帯をひらいて君へのメールに
返信をしようとしたものの
どうがんばっても
論理的な文章は書けそうに無かったので
あとまわしにすることにした

深呼吸をして一歩踏み出す
掻き卵みたいに心臓が痛んだ


自由詩 恋あるいは衰弱について Copyright 吉田ぐんじょう 2007-01-09 11:35:43
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