恋あるいは衰弱について
吉田ぐんじょう
年明けからこっち
どうも調子がよろしくない
いったん種子から出たやわらかな芽が
地上の冷気を恐れて
土の中でぐずぐず躊躇うような感じで
段々衰弱してきたのである
それは君に逢わなかったから
と云うよりも多分
君に逢ってしまったからだと思う
小動物のように弱くなって
守られたがっているのだと思う
だけどそれはわざとではなくて
何と云うか本能的なものなので
どうしても止め処がなくて困っている
朝
君から着信したメールは
意味がわからなかった
日本語が書いてあるのだけど
わたしじゃない人の名前ではじまっていた
返信はしてないけど一応
保護はしてある
送信箱は君の名前で埋め尽くされて
まるで呪っているみたいだ
わたしはブーツにつま先を差し入れ
矢張り思い直してスニーカを履いた
紺色のリーボック
今からハローワークへ行かなくてはならない
携帯をひらいて君へのメールに
返信をしようとしたものの
どうがんばっても
論理的な文章は書けそうに無かったので
あとまわしにすることにした
深呼吸をして一歩踏み出す
掻き卵みたいに心臓が痛んだ