つたい はじまる
木立 悟




轍に映る
音の魚
午後へ午後へ流れつき
雨のように息をめぐる


偽の季節の声があり
激しく隙間多く震え
水と風の
通り道は濃く


頬をすぎる波
くちびるの波
ついたばかりの傷の
痛み無き熱


道を曲がり
去ってゆく雪
腕をめぐるひとかけら
静かにふり向き 燃え昇る


曇につながる音のまま
水を押しては止まぬ金
すれちがうまま あふれでるまま
手わたされてゆく月の揺れ


灯すものなくうたは閉じても
魚のねむりに触れる息
燃え昇るかけらの行方から
幾度も幾度もはじまってゆく


雨を見つめる髪に生まれる
さかさまの花 さかさまの羽
午後を洗う波の影に
うたかたのなかにはばたいてゆく












自由詩 つたい はじまる Copyright 木立 悟 2007-01-08 23:02:10
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