鍋の底
とうどうせいら
おでんを
初めて食べたのは
あなたの家の
ばんごはん
半透明の大根に
皮のやわやわなちくわ
味のしみた卵
だしを二種類とるのがコツなのよ
と
あなたは言ったっけ
今は
あなたも
あの家も
なくなって
私は教わった通りに
おでんを作って
仲間と食べています
あなたの家では
入れなかった
餅巾着を入れて
近ごろ 食べるようになりました
鍋の中は
うっとりとろけた
鰹と昆布
蓋を開ける時
私は
あなたの笑う声を聞くのです
金色の海の底から
小さな泡が立ち上る音
くつくつ と
自由詩
鍋の底
Copyright
とうどうせいら
2007-01-07 20:39:17
縦