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温泉宿はがらんとしていた

白く濁った湯が注ぎ続ける

昼に聞いた滝の音

湯気の向こうに

千切った半紙のような月
もうどうせ間に合わないと知って

少年はランドセルを鳴らすのを止めた

土手に咲く花々の名を

どれひとつとして知らない

草笛はこんな風に鳴らせるけれども
うっすらと閉じた

まぶた(まつげ)から

真白き炎

ああ、彼女は

恋をしている
雨の街は花園

ダリア・ヒマワリ・バラ

小菊・紫陽花・朝顔

花たちは楽器でもある

雨の細い指がそれを{ルビ弾=はじ}くと
蜘蛛の編んだ細い網に雫

ひとつひとつに虹がかかり

その上を二人連れ立っていく

時には酔った蝶と芳しい花

時には奏でる風と歌う鳥
墺山 遂子さんの曠野さんおすすめリスト(5)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
温泉宿- 曠野未詩・独白407-5-25
草笛- 曠野未詩・独白607-5-18
- 曠野未詩・独白206-12-26
- 曠野未詩・独白406-6-23
- 曠野未詩・独白3+06-6-17

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