音は雪に食べられてしまい
部屋は
かえって生きものの息づかいでみちている
台所の戸棚のなかで
じゃがいもの芽が伸びてゆく
張りつめた胸の皮膚のしたを
薄くなった血がめぐっている
....
風呂に入るために湯を足しました。
昨夜、散々湯船の中で遊んで
ピンク色に汚れた湯なんだけれど、
ボクは構わず入ります。
みんなにソワソワ言われたけれど、
ボクが脳天までどっぷり浸 ....
どこにも居場所がないような
そんなどうしようもない気持ちの午前1時
返ってくるはずもない友達からのメールの返信を待ちわびて
何度も何度も送受信ボタンを押してしまう悲しい習性
今日もうまく笑 ....
冷たい雨は たちが悪い
それに風が加わると最悪な夜だった
粗悪なアスファルトはタイヤに雨水を投げさせては
信号を待つ私の股間を濡らす
何だよ
世間は雪と氷の祭典で盛り上がっているのに ....
付き合いでサーフィンを始めた。
付き合いと言ったらゴルフだと思っていた。ゲームで磨いたわたしの腕は祖父と一緒に眠
ったまま。
南の方の生まれだから冷たいのは苦手なんですよ、というわたしの ....
語弊があるような言い回しは避けて
誤解を生むような表現は消して
本当に伝えたいことだけを
傷つけないように
耳を傾けてもらえるように
心を開いてもらえるように
気分を損ねな ....
あなたはそれを
必然だと言う
わたしはそれを
偶然だと思いたい
あなたはそれを
どうしても運命にしたいらしい
わたしはそれが
無数の枝分かれの末端にしか見えない
この世界で ....
ちいさな錯覚
のぞんだものはちいさな錯覚
祝福も花束も要らないちいさな錯覚
それだけで良かったのに
ありふれた水も飲み干せてしまうような
不安定な曇りの昼下がり
虚無の ....
挨拶したのに
ぼくを見て
顔を横にして
何もいわない人の
その一瞬が
ぼくのこころに
小さな傷を作る
返さない人の
こころのうちは
苦しくはないのだろうか
その人のことを
....
バサラ街カオス4番地
米ミズーリ州ホワイトマン空軍基地から、闇の中を密かに4機のステルス爆撃機が飛び立った。
同じ夜、人妻が出歩いているのは、基本、家にダンナがいないせいだ。
....
カバーガラスの風が吹いて
舌の先で飴は鋭く溶けて
バラバラ落ちて
切り裂く視線がカーテンの隙間からおくられる
夏だるまが溶けて
部屋は口を閉じて
ひかれた猫も車の標識も覆われて ....
雪雪らしく
ずっしりと降る降る
けれどけれど
踏まれて踏まれてるからさ
ただの氷ね
なんて効果音つかえば
いいかな
ってたくさん会話で頭
使うんだけど
けっきょく ....
バレンタインにIKEAの椅子を組み立てるなんて
まっぴらだ
Costcoの買い物カートに
チップス積み上げるのも
どうかしてる
商店街でコロッケ食べよ
アーケード抜けて
お地 ....
「ああ,嫌だ」
彼女は台所の隅でぬか床を愛撫しながら言う
手を入れるたびに 「さくっ,さくっ」と音がする
重みに耐えかねた雪が どさっと落ちる
たまの大雪くらいで大騒ぎできるほど平和だ
....
試食用だと思ってた
冬の下総台地の端に
小さな家一軒
剥き出しの枝と幹だけの
梨畑の中に
小さな家一軒
落葉高木の梨の樹
畑の樹は灌木のようで
海軍レーダーのように
針金が渡されている
白い季節 ....
あの子は文学少女のなりそこない
文学の恋に落ちずに流行追いかけ
ピンクのスカートひらりはいて
スイーツ食べに行っちゃうの
さびしいさびしい本が泣いてる
ゲーテにダンテ、ポーも知らない
....
――夕映えがきれいだった あのころ
もし自転車にのれていたなら
ほかの街で ほかの暮らしをしていたのかもしれない
すでに滅びた高句麗の
釘のように錆びた川がながれる
....
くたくたに疲れているのに、眠りはなかなか君の部屋を訪れてはくれない。一日中凍え、平坦なオシログラフのようなイデオロギーのなかで木偶人形ごっこをし続けて、おまけにいま窓の外では辛気臭い雨が錆びたトタン壁 ....
明日いきなり 死んでしまうとして
さいごに
なにが食べたい? と聞かれても
別になにも食べたくない
缶のミルクティーと
チロルチョコだけで
遠くへ
一歩でも遠くへ
見たことのない ....
あなたがむかし
わたしにつけた縄を
こんどはわたしが
あのひとに結びます
雪は屋根のうえでだらしなくなって
白がすこし疲れたようす
毎朝 沸騰する
わたしの身体を知らないでし ....
誰もが消えた 街は
夕暮れ 誰もいない言葉 例えば 誰もが
心に留めた言葉は聞こえているのだろうかと思う 誰もが
誰も皆心に 綺麗な声を思っているけれど
詩は今世紀で途絶えていくの ....
ベランダの茎に雪が積もって
どこか雪花のようだった
西日の中でも負けずに元気だった
まだ咲いてほしくて片づけなかった
小さな花
種を落として、鳥
鉢のすみで咲いて
....
僕は生まれ変わったらディドになりたい
というとディドはベッドの枕元に座ったまま
そのままぴくりともしないで笑うようにした。困った笑いだ。
ディドは半ズボンをはいている。そ ....
きみの旅が終わる時
黒ずんだザックの中には
通り過ぎてきた街の悲しみが
薄汚れた上着のポケットには
誰にも見せたくない たからもの
それはきっと
今のきみにとって
おおい隠 ....
このところ
野菜をサプリメントだけで摂取してたら
とうとうピーマンのアルファルファ詰めが現れた
何で肉詰めじゃないんだ!
そー言われても
私はピーマンのアルファルファ詰めなんで
....
硝子板の上の小さな池で
草履虫が草履虫を食べる
部屋には誰もいない
かすかに染み付いた酢酸臭がする
壁には飛び散った硝酸銀の痕跡
古代の半島を描いている
午前11時の憂鬱
あたし ....
わたしのとういところをみぞれがながれていった
かこがかこらしいままかせきになり
結晶とわたしが
まったくおんなじそんざいになった
いつかひかるものとしてあつかわれる
幻の火にてらされ ....
もし よかったら
分けてくれませんか
眠らずに見るあなたの夢を
怒りを
悲しみを
もし よかったら
分けてくれませんか
翼を閉じた時
やってくる絶望を
未練を
空しさを
....
シグレタ
3月に降り始めた雨が、三年たった今もやまない。ザァザァが続く。土は流れることに疲れたのか、ずっと海の底で静かに暮らしている。大陸は削れない岩の塊、所々にある隙間は、大きく大きい。人が入 ....
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