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修善寺の源泉で
足湯に浸した
両足は
鬼の如く真っ赤に染め上がり
旅人は心に決める。

――この足で、日々を切り裂こう

娑婆の世を生きるには
時に…鬼と化さねばならぬ
が、赤い仮 ....
鉛筆の芯を、削る。
何処までも鋭く、削る。
(誰かを傷つけるのではなく)
{ルビ褪=あ}せた現実に、風穴を空ける為に。  
もし――凸凹な
パズルのピースである、僕等が
舞台の上でスクラムを組んだら

明日へ光を放射する
一枚の絵画になるだろう  
きみは、掴まねばならない
その手をまっすぐ、明日へのばして

耳を澄ませば――確かに聴こえる
言葉ではない、不思議な呼び声

黙したまま私達を待つ
二十一世紀の霧の向こうの、{ルビ朧=お ....
母ちゃんが、洗濯物の皺をのばして
竿に衣服を干している。

実家を離れて久しい
娘についての深い悩みを
ひと時、忘れて。

日にましろく照らされた
タオルを
丹念に、のばして。

 ....
昨年、天寿を全うし、肉体の衣服を脱いだ
山波言太郎先生の御魂に捧ぐ手紙を綴り
我が家の神棚に、お供えした。

妻が蝋燭に、火を点けた。
少しして、じいぃ・・・と言って
火は、消えた。  
 ....
包丁を、ざっくり押しこんで
西瓜を割る。

無数の黒い種達は
それぞれの姿勢で
つややかに埋まっている。

――どうせぺっぺと吐き棄てられて
  土から芽を出すのでもなかろうに

 ....
野原の道でもつれて、転び
膝から血を、滴らす
少年・吾一は
埃を払って立ち上がり
拳を握り、天に叫んだ

「我は世界に、一人なり…!」

その時
背後の川の何処かで
ぴちゃり、と銀 ....
熱燗の、おちょこの横の
受け皿に
五匹のししゃもが銀の腹を並べ
口を開いて、反っている

いつか何処かで観たような
あれはピカソの絵だったろうか?
絶望を突き抜けてしまった人が
空を仰 ....
「軽くふれて下さい」という場所に
そっと手をあてると、自ずとドアは開いた。  

人の心も、軽くふれてみようと思う。  
10年前の僕よ、なんだか憂鬱そうに涙を
浮かべ、夕暮れのベンチに俯いて、一体ど
うしたんだい?君の目に、透明な僕の姿は
映らないだろうけど、心配だから様子を見
に来たんだ。やがて君の涙は(時の ....
切符があるから、電車に乗れた。
食券があるから、ラーメンを食べた。
パスポートがあるから、異国に行けた。

それならば
鏡に映る(わたくし)が
一体何者なのか?という
最も不思議な秘密に ....
雪の綿帽子をかぶり
のっぺらぼうの顔をした
路傍の石が
こんにちは――と、僕を呼ぶ  
紅茶に檸檬の一切れを  
ぎゅ…っと搾ったら
カップの中が
ぱっと明るくなりました

目の前のあなたにも
一日一回
垂らしてみたい
檸檬の滴  
週末の仕事を終えて
駆けつけた、朗読会の夜。  

再会の朋と麦酒の入ったグラスを重ね
泡まじりの一口目に「ふうぅ…」と、一息。  

不惑の四〇歳とやらになって間もない朋は  
司会者 ....
在りし日の作家が住んでいた山荘に入り  
籐椅子に腰を下ろした旅人は瞳を閉じる。  

傍らの蓄音機から流れる古びたショパン 
のバラードと窓外で奏でる晩夏の蝉のコ
ーラスの二重奏に耳を澄ま ....
どうすれば僕は  
急坂さえも一気にのぼる  
機関車男になれるだろうか?  

この腹に内蔵された  
エンジンの蓋を開けたら  
思いの他にぼうぼうと     
炎は燃えていたのです ....
「二十世紀」と「ラ・フランス」は 
親しげに肩を並べ 
(互いにちょっとの、すき間を空けて) 
顔も無いのによろこんで、佇んでいる。 

「偶然だねぇ」 
「ふしぎねぇ」 

ほの青さ ....
窓の外の遠くには 
丘に建つ一軒の家があり 
四つの窓が
目鼻のように開いている 


   □ 
     □ □ 
   □ 


あ、窓から子供が顔を出して緑の風に{ルビ靡 ....
みつめれば、みつめるほど 
世界は語る本となり 
行間の道で草花の囁く秘密は 
旅人の背に、託される 
鏡の前の
リクライニングに座り 
鋏を手にしたおじさんに
全てをまかせて、瞳を閉じる 

ぱさ、ぱさ、と切り落とし 
頭はだんだん軽くなる 

ぱさ、ぱさ、と切り落とし 
心はだんだ ....
異国のひとの後ろに並んだ。 
ぷうんと異国の匂いがした。 

異国のひとはその前の背中から 
日本人の淡い匂いを嗅いだ。  

他人の匂いは良く嗅ぐが 
自分の体臭は知らないもの 

 ....
一つのものをじっと視ると 
目が熟してゆく 

机上に置かれた 
何の変哲もないコップに宿る 
一つの目が、こちらを視ている 
目の前にまっさらな木の板がある。 
ペンを持つ手があらわれ 
中心に名前を書いていった 

それは一つの遠い約束。 

生まれるよりずっと昔から 
何者かに記されていた 
あなたの名前 ....
こひもともひこさんの服部 剛さんおすすめリスト(24)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
鬼ノ涙___- 服部 剛自由詩615-10-27
色鉛筆___- 服部 剛自由詩515-10-7
Vision_- 服部 剛自由詩515-4-29
霧の時代- 服部 剛自由詩614-10-28
洗濯日和__- 服部 剛自由詩514-10-28
夜の来訪者- 服部 剛自由詩414-10-22
西瓜の種- 服部 剛自由詩714-5-28
絵本の風景- 服部 剛自由詩614-5-6
ししゃも- 服部 剛自由詩21*14-2-20
自動ドア- 服部 剛自由詩14*14-1-16
声援ーあの頃の僕にー__- 服部 剛自由詩5*14-1-14
パスポート- 服部 剛自由詩5*14-1-14
石ノ声- 服部 剛自由詩3*14-1-14
檸檬の滴- 服部 剛自由詩414-1-6
麦酒の味__- 服部 剛自由詩713-12-1
まほろばの声__- 服部 剛自由詩213-9-10
機関車男__- 服部 剛自由詩1213-8-18
果物夫婦- 服部 剛自由詩7*13-6-5
家の顔_- 服部 剛自由詩7*13-5-6
旅人の本_- 服部 剛自由詩6*13-2-20
床屋にて_- 服部 剛自由詩912-12-16
ひとの匂い_- 服部 剛自由詩412-11-27
ものの目_- 服部 剛自由詩312-10-15
名前- 服部 剛自由詩312-10-15

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