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深夜――薄闇の部屋に
CDデッキの青い灯かりを、点けて
遠藤周作の母・郁が
遠い過去から唄う讃美歌を流した。

人より染色体が一本多い
三才の周は、高熱で寝こんでいるのに
一瞬――鈴の笑 ....
はらはらと、風に揺られて
前方に、無数の枯葉等は舞い
鎌倉の湿った土に降りつもり…

旅人はぬめり、ぬめり
幾世代もの黒ずんだ枯葉等を
踏み締めてゆく

両側の
崖と崖を削った、一本 ....
ぼこぼこぼこ…泡の沸き立つ
黒い温泉に浸かる人々は
防水テレビの中を走る
箱根駅伝のランナー達に、目を細める

正月休みのひと時に
白いタオルを頭にのせて
自らの今年一年に、重ねるように ....
頬をなでていった、風を
振り返った遠い背後の道で
独りの樹は嬉しそうに、葉をゆらし
無数のみどりの掌は
こちらに合図している

この足もとに伸びる人影が、口を開く
(見エナイ世界)を呟く ....
どしゃぶりの雨の中
透けたシャツの後ろ姿のまま
途方に暮れた君が、突ったっている

僕は時空を越えて未来から訪れた
透明人間の旅人だから
声をかけることすらできないけれど
誰よりも親しめ ....
遠い旅路に目を凝らせば
吹雪の風によろめきながらも
なんとか歩いている奴の姿が
幻のようにぼやけて、見える。

(ああ、あれは幼い頃のよちよちの、
思春期の頃のぼろぼろの、年老いた
日々 ....
平日の空いた車内に腰かけて
「記憶のつくり方」という本を開いたら
詩人の長田弘さんが、見知らぬ町を旅していた。

喫茶店に腰を下ろした詩人は
ふぅ…と溜息をひとつ、吐き出し
哀しい歴史を帯 ....
夜の人気無い交差点で
暗闇の赤信号の中
ひかりの人が立っている。

ゆるぎない姿勢で
こちらに何か、云いたげな
未知の国から訪れた旅人のように。

かれは
赤い世界に包まれた
情熱 ....
染色体の一本多い、3才の周が
初めて言葉を発した
「それ…」
僕は身を乗り出して、聴き直す
「え、なに?」

目が覚めた――(なんだ、夢か…)
布団からひょっこり顔を出して
周はまだ、 ....
知覧の草は、さやさや…{ルビ哂=わら}う
川のせせらぐままに、身を揺らし

昔――ここから近い滑走路で
戦闘機に乗り、飛び立って
眼下に広がるいちめんの
海の彼方へ

 お母さん…!
 ....
きみは、掴まねばならない
その手をまっすぐ、明日へのばして

耳を澄ませば――確かに聴こえる
言葉ではない、不思議な呼び声

黙したまま私達を待つ
二十一世紀の霧の向こうの、{ルビ朧=お ....
母ちゃんが、洗濯物の皺をのばして
竿に衣服を干している。

実家を離れて久しい
娘についての深い悩みを
ひと時、忘れて。

日にましろく照らされた
タオルを
丹念に、のばして。

 ....
無数の雨達はアスファルトに、跳ね
世界を覆う
ざわめきを鼓膜に残して
私は夢から、目を覚ます。

布団から身を起こし、のびをする
朝のひと時。

夢の中で、瞬く間に
姿を消す雨達と
 ....
一つの苗を手にした、僕は
じぃ…っと屈み
{ルビ水面=みなも}に手首を突っこんで
柔い土に、苗を植える

どんなに風が吹こうとも
どんなに雨が降ろうとも
どんなに陽が照ろうとも

い ....
昨年、天寿を全うし、肉体の衣服を脱いだ
山波言太郎先生の御魂に捧ぐ手紙を綴り
我が家の神棚に、お供えした。

妻が蝋燭に、火を点けた。
少しして、じいぃ・・・と言って
火は、消えた。  
 ....
朝の信号は、青になり
盲目のひとは白いステッキで
前方をとんとん、叩きながら
今日も横断歩道を渡ってゆく

日々の{ルビ道程=みちのり}を歩く
惑い無き後ろ姿は
人混みに吸い込まれ
段 ....
遠藤文学講座の後に、皆で語らう
この店で僕は、受洗を決意した。
この店で僕は、息子の障がいに泣き崩れた。

四ツ谷の地下の珈琲店・エルは
奇遇にも
遠藤先生の命日である、今日
四十五年の ....
白球は時に、燃えている。

ふいに巡ってきた
体調不良選手の、代役出場。

3回表、2アウトランナー2塁のピンチ。
1年中ぱっとしなかった、彼の
守るレフトの後方に
打者の打った白球が ....
丸い月を映す池の、{ルビ水面=みなも}はゆれ  
草の露に宿る月も、風にゆれ   

僕が苦手と思っていた
あの人の瞳の奥にも
もしや
僕に似た心象の水面に、ゆれる

月のひかり  
 ....
太陽は常に西の空へと往きますが
この地球上に立っていると
まるで停まっているようです

花はゆっくり開いてゆきますが
開花はまるで、魔法です

孤児を育てる里親さんは、言いました
「親 ....
親父の血管は動脈硬化で、か細くなり
心もとないこれからの日々を思い
深夜にぱっちり目覚めた、僕は
汗を拭って、身を起こす

今頃、隣町の空の下
親父はすやすや寝ているだろうか?
気が気で ....
ふだんは優しい女房が
時折、般若の顔になり
言葉の弾丸は
だ・だ・だ・だ・だ
だ・だ・だ・だ・だ
だ・だ・だ・だ・だ
柳のような面影で
げっそりとした
僕の髪を靡かせ
遠い彼方へ通過 ....
それは二度と帰れない季節
それは{ルビ陽炎=かげろう}の向こうの想い出

もう、手の届かない恋があり
これから手を伸ばす、夢があり

{ルビ永遠=とわ}に年齢の無い旅人のまなざしで
今日 ....
その人は大きく息をついて、腰を下ろした
――これは、何段あるんですかね…
――二百八十七段です、どちらからですか?
――高知です
――遠いですねぇ…僕は横浜です

傍らに、古びたリュックが ....
{ルビ久遠寺=くおんじ}の山門を潜り
巨きい杉木立の間に敷かれる
荒い石畳の道を抜けて
前方に現れる
天まで続く梯子のような
二百八十七の石段

緑の山の何処からか鳴り響く
{ルビ団扇 ....
私の重みで、凹んでいる
タイヤの椅子のブランコが
ぎっしり…ぎしり…と{ルビ軋=きし}んで、ゆれる

軋んで、ゆれていくほどに
ぷらたなすの樹は、詩いだす
ざわつく若葉も、踊りだす

 ....
仕事でヘマをして、凹んで帰った。
さっさと布団を被って、寝た。
早朝にぱっちり目が覚めた。  
おもむろに立ち上がった僕は、外に出た。

西に沈むでっかい満月に
思わず、足を止めた。

 ....
今夜は義父の78歳の、誕生日。

2才の孫を抱っこしてもらい
僕と妻はハッピーバースデーを歌い
熱燗を注いだ{ルビ御猪口=おちょこ}で、乾杯した後
義父は主賓のあいさつ、を始めた。

「 ....
電車を待つ駅のホームで
小さい両手いっぱいに
飴玉をのせ
ほら、とパパに見せる女の子
(夢がたくさんあるんだねぇ…)

改札口を出た脇で
人々の過ぎゆく中に
突っ立って
開いた本とに ....
包丁を、ざっくり押しこんで
西瓜を割る。

無数の黒い種達は
それぞれの姿勢で
つややかに埋まっている。

――どうせぺっぺと吐き棄てられて
  土から芽を出すのでもなかろうに

 ....
夏美かをるさんの服部 剛さんおすすめリスト(245)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
マリアのまなざし- 服部 剛自由詩315-1-14
太刀洗の道- 服部 剛自由詩5*15-1-4
露天風呂__- 服部 剛自由詩315-1-3
- 服部 剛自由詩1114-12-30
透明人間の声援(エール)__- 服部 剛自由詩714-12-24
笛の音__- 服部 剛自由詩314-12-23
旅の列車にて- 服部 剛自由詩614-11-28
夜の信号- 服部 剛自由詩314-11-28
朝の日記- 服部 剛自由詩12*14-11-9
草ノ声ー知覧にてー- 服部 剛自由詩214-11-6
霧の時代- 服部 剛自由詩614-10-28
洗濯日和__- 服部 剛自由詩514-10-28
雨の合唱- 服部 剛自由詩614-10-22
茶碗のゆげ- 服部 剛自由詩314-10-22
夜の来訪者- 服部 剛自由詩414-10-22
盲目のひと- 服部 剛自由詩614-10-5
机上のワインー珈琲店・エルにてー__- 服部 剛自由詩414-10-5
燃える男- 服部 剛自由詩214-9-17
夜の池- 服部 剛自由詩414-9-17
地球ノ時間__- 服部 剛自由詩10*14-8-14
形見の杖__- 服部 剛自由詩214-8-14
姉さん女房に捧ぐばらっど- 服部 剛自由詩614-8-4
陽炎の道__- 服部 剛自由詩114-8-4
旅人の会話__- 服部 剛自由詩214-7-18
身延山にて- 服部 剛自由詩314-7-18
ぷらたなすの樹__- 服部 剛自由詩514-7-8
夜明けの散歩- 服部 剛自由詩514-6-16
祝い酒の夜__- 服部 剛自由詩414-6-9
子供のマーチ- 服部 剛自由詩714-6-3
西瓜の種- 服部 剛自由詩714-5-28

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