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{ルビ深閑=しんかん}とした井戸の底で 
今夜も私は、{ルビ蹲=うずくま}る。  

遥か頭上の丸い出口の雨空に 
嵐はごうごう、吹き荒れて 
木の葉がはらはら、鳴っている 

遥か ....
赤・白・黄色の器を 
ほわっと開いて 
ちゅーりっぷが咲いている 

通りすぎゆく人々の上に 
そっとそそがれる 
天の歌を受け取り 

嬉しそうに 
細い茎を揺らして 


 ....
あなたはそこに 
じっと佇んでいる 
ひとりの貝 
そっと口を開いた奥に 
光の{ルビ珠=たま}を秘めて 
闇をあまねく照らし出す 
――再び発つ、と書いて「再発」という―― 

    * 

「人間はふたたび起きあがるようにできているのさ」 
いつも眼帯をしてる{ルビ達磨=だるま}診療所のヤブ医者は 
片っぽうの目で ....
晴れた日のアスファルトは 
優しい日射しも、照り返す 

雨の日のアスファルトは  
小降りの粒も、無数に弾く 

土のこころを知るならば 
土のこころを知るならば 

空の言葉は我 ....
精子の姿は、魂に似て 
お玉杓子は、音符に似て 
もし、魂が音符なら 
メロディは 
五線譜を泳ぐでしょう 

無数の精子と精子の競争を 
勝ち抜いた選ばれし精子よ 
 
君は辿り着 ....
渋谷の公衆便所に入ったら 
「ほらおとっつぁん、チャックを閉めて」と 
初老の息子は傾く体の親父を支えて、言った。 

なんとか息子に支えられ 
よたつく親父の背中には 
(いたる)と3文 ....
「あんた、マフラー飛んでるよ!」 

ホームのベンチから立ち上がり、叫ぶ男。 
首を後ろに振り向いて、道を戻ろうとする女。 

ぶおおぉん――… 
ホームに入った電車が視界を、遮った。 
 ....
うっとりと瞳を閉じて 
光の石を両手に乗せて 
立っている円空さん   

静かないのちの歓びが 
体の隅々まで葉脈を巡らせ  
行き渡っているようです 

森に佇む木の体  
日向 ....
ひとりの木の中に 
微笑み坐る、仏がいる 

人という木の幹の中に 
両手をあわせる、仏がいる 

円空さんが無心で彫った 
木の像が、幾百年の時を越え 
何かを語りかけるように 
 ....
伊東の老舗・東海館で 
和室の窓外に、ゆらめく川の{ルビ水面=みなも}を 
一羽の白鷺が横切った 

一枚の枯葉が今 
枝先を離れ、ゆらめく川の水面へ 
身を{ルビ翻=ひるがえ}し宙を舞う ....
暗がりの映画館で 
白黒のスクリーンには 
だぶだぶの燕尾服に
しるくはっとのチャップリン 

ふらりと現れた酔っ払いと 
ふとしたことから口論になり 
胸ぐらつかみ、胸押しあい、もつれ ....
今日という一日に数え切れない
(ありがとう)が、隠れている。  

よく晴れた日の夜空に 
いつのまにか姿を現す 
あの星々のように―― 
石巻の仮設住宅に住む 
Tさんに新年の電話をした 

「あけましておめでとうございます 
 今年もよろしくお願いします  」 

「いよいよ来月から 
 津波に流された場所に、もう一度  ....
無精者ゆえに 
手の爪は時折切っても 
足の爪はしばらくほったらかしで 
気づくとひと月過ぎていた  

風呂あがりの軟い爪を 
ぱち、ぱち、と 
広げた新聞紙に、落とす。 
(これを ....
箱のカバーから、背表紙を指で摘み
中身の本を取り出して  
カバーは向かいの空席の、あちらに 
中身の本は目線の下の、こちらに 
置いてみる 

いつか人が(体を脱ぐ)のは 
こういうこ ....
蟻は匂いのある方へ往く   
一瞬、静止して 
触角をぴくり震わせ 
再び――無心に進む
 
(黒い背に小さな太陽を映して)

日常にふと佇む、僕も 
蟻の心で 
何かを受信しようと ....
食卓に置かれた長方形の皿に 
横たわる、くろい目の秋刀魚は  
いつか世を去る 
私の象徴として、この口に入る 

   * 

日常の素朴な場面を絵に描いた 
一枚の布をバケツの ....
みつめれば、みつめるほど 
世界は語る本となり 
行間の道で草花の囁く秘密は 
旅人の背に、託される 
塩を振られたなめくじは 
縮みあがった僕なのです 

縮みあがった僕だけど 
今は一児の父なのです 

一児の父であるならば 
縮みあがった、この体 

自分らしくのそぉりと 
濡 ....
私の詩は
日々の呼吸のようなもの 

幾千万も繰り返す 
数え切れない吐息等が 
ふいに光るように 

今日も私は 
まっさらに広げた 
紙のスクリーンに 
日々の場面を浮かべ 
 ....
仕事から帰ると嫁さんが 
「はい、これを見て!」と新聞を手渡した 

※今週の本・Top10※ 
1位… 
2位… 
3位柴田トヨ「くじけないで」 
4位… 
5位… 
6位柴田トヨ ....
この世に生まれてから 
今日に至るまでの一日々々を 
風に捲られてきた暦は 

人生の旅路の果ての
終着駅に至るまで 
捲られる暦は 

どれほどの厚みだろう――? 

産声をあげ ....
薄茶けた昭和の古書を開いて 
ツルゲーネフの描く 
露西亜の田舎の風景から 

農民の老婆の皺くちゃな手は 
搾りたてのぶどう酒が入った器と 
焼き立ての丸い{ルビ麺麭=パン}を 
時を ....
雨の降る公園で 
ずぶ濡れのまま、しゃがみ 
小石を手にした少年は 
地面に絵を描いていた 

通りすがりの僕は 
吸い寄せられるように、公園に入り 
少年の傍らに、しゃがみ 
すっぽ ....
日々それぞれの 
場面々々に  
直観の行為、を積み重ねよ―― 

行けば行くほど・・・ 
動けば動くほど・・・  
一つの○い出逢いの場に 
日向はあふれ 

あなたはそこで{ルビ ....
年賀状の写真から 
親戚の一歳のこどもが 
すくっと立って、こちらに 
きょろりとした目で
新年の挨拶をする 

その夜 
嫁さんが皿を洗う音を聞きながら 
一足お先に布団に入った一歳 ....
細長いのっぽビルの 
1階から23階へ 
光のエレベーターは昇りゆく 

23階から1階へ 
光のエレベーターは下りゆく 

祈りとは 
両手をそっと重ね 
天と地をつなぐ交信である ....
暗闇の航路を照らすあの灯台に
あなたは、詩人を観るだろう。 
老人ホームで百歳のお婆さんが旅立ちました 
「若い頃桜島が噴火してねぇ・・・ 
 首輪をつながれた愛犬の悲鳴が 
 今も聴こえるんだよ・・・   」 
遠い昔に世を去っても 
お婆さんの心に ....
夏美かをるさんの服部 剛さんおすすめリスト(245)
タイトル 投稿者 カテゴリ Point 日付
井戸の底にて_- 服部 剛自由詩6*13-4-16
春の日溜り_- 服部 剛自由詩3*13-4-16
- 服部 剛自由詩4*13-4-16
達磨診療所_- 服部 剛自由詩8*13-4-4
空の言葉_- 服部 剛自由詩4*13-4-1
精子の旅_- 服部 剛自由詩5*13-4-1
渋谷の公衆便所にて_- 服部 剛自由詩613-3-22
人間の声_- 服部 剛自由詩413-3-22
光の石_- 服部 剛自由詩513-3-17
円空さんの声_- 服部 剛自由詩313-3-17
百年の夢_- 服部 剛自由詩413-3-13
チャップリンの友情賛歌_- 服部 剛自由詩313-3-13
ありがとうの星_- 服部 剛自由詩813-3-8
希望の芽- 服部 剛自由詩413-3-8
休日の過ごし方_- 服部 剛自由詩4*13-3-3
あちらとこちら_- 服部 剛自由詩4*13-3-3
蟻の心_- 服部 剛自由詩6*13-3-2
ある哲学者との対話_- 服部 剛自由詩2*13-3-2
旅人の本_- 服部 剛自由詩6*13-2-20
なめくじ親父_- 服部 剛自由詩14+*13-2-19
紙のスクリーンー私の詩ー_- 服部 剛自由詩413-2-19
柴田トヨさんの声__- 服部 剛自由詩6*13-2-14
日捲りカレンダー- 服部 剛自由詩3*13-2-14
老婆の麺麭- 服部 剛自由詩8*13-2-12
ペガサスの瞳__- 服部 剛自由詩3*13-2-12
木のひと- 服部 剛自由詩5*13-2-8
はつ夢_- 服部 剛自由詩3*13-2-8
ヨコハマの青い夜景ー献杯の詩ー_- 服部 剛自由詩4*13-2-6
灯台ノ道_- 服部 剛自由詩6*13-2-6
愛犬の声_- 服部 剛自由詩8*13-1-28

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